STORY

【Sweet Protection  ライダーズシューティング】三者三様の滑りが交差した、旭岳での“最高の一日”

【Sweet Protection ライダーズシューティング】三者三様の滑りが交差した、旭岳での“最高の一日”

週末に全道で雪が降った月曜日の朝。 旭岳の空は、そんな週末の名残を感じさせないほどの青空で迎えてくれた。 旭岳までの道路はまだ所々に氷が残り、運転中のハンドルにも自然と力が入る。 今日はSweetProtectionにとって、初めてのライダーズシューティング。 ・札幌・手稲山を“マザーマウンテン”と称し、精度の高いスピーディなターンで観る者の心を震わせるプロスキーヤー・中西太洋 ・大胆かつ独創的な滑りで唯一無二の存在感を放つプロテレマークスキーヤー・木村駿太 ・フリーライドの大会で挑戦を続け、クリフジャンプやエアートリックで魅了するBonz Crewのフリーライドスキーヤー・藤井陽介   中西太洋   木村駿太   藤井陽介   この日集まったのは、この三者三様のスキースタイルを持つ、異なるカラーの3人のライダーだった。 旭岳ロープウェイの駐車場に着くと、彼ら3人に加え、今回の撮影を担うカメラマン・中村祐太、そして旭岳の麓町でコアなスキーヤーやスノーボーダーたちのベースとなっているカフェを長年営み、旭岳を知り尽くす今回のアテンド・吾郎さんがすでに待っていた。 初めてのチーム編成に最初はぎこちなさもあったが、ブランド側の私たちに不安はなかった。スキーヤーもスノーボーダーも、滑り手同士は言葉よりも先に“雪の上”で打ち解け合うことを知っていたからだ。それ以上に期待したのは、スタイルも年齢も異なるライダーたちが、互いの個性をどう交差させ、どんな化学反応を生むのかということだった。   三者三様の個性が自然と際立つ 1本目。まだ誰のラインも入っていない沢とクリフを見つけると、それぞれの個性が自然と際立ち始める。 中西太洋は、自身のターンが最も引き立つ沢へ向かい、その滑りはまるで絵を描くように繊細かつ大胆だ。  木村駿太と藤井陽介は、クリフの上で着地点を何度も見定めながら、どこから飛ぶか、どう着地するかを緻密に話し合う。その姿には、ジャンプに対する真摯な姿勢と、己のスタイルに対するこだわりが滲んでいた。 ピーカンの青空が広がり、雪のコンディションは悪くない。ただし、日差しが強すぎると雪が緩んでしまう。この好天が味方か敵か、時間との勝負でもあった。   雪の上で育つ信頼とリスペクト   次に向かったのは、コースを外れた旭岳のバックカントリーエリア。 ツリーランでの滑りは、やはり3人の個性が際立った。3人ともそれぞれのスタイルを極めていながら、バラバラなはずの3人が、滑るたびにひとつの作品になっていく。納得のいかない滑りに悔しげな表情を見せる者もいれば、パフォーマンスに満足した表情を浮かべる者もいた。いろんな感情がそこには表れていた。 撮影が進むにつれ、ライダーたちの距離はみるみる近づいていく。それぞれが最も自分らしくいられるラインを選び、自分のスタイルで勝負する。まさに三者三様、だがその中に確かなリスペクトと連携があった。互いを尊重し合い、刺激し合う姿は、まさに理想的なチームの在り方だった。   山麓駅での待ち時間が育てた絆  そして11時過ぎ、麓駅に戻ってくると、そこにはまさかの長蛇の列。平日にも関わらず、好天に誘われたスキーヤー・スノーボーダーが続々と詰めかけていたのだ。 この待ち時間が、思いがけずチームの距離を縮める貴重な時間になった。 「最近どこ滑った?」 「道具の調子どう?」 そんな他愛もない会話から、互いの活動や価値観を知る。ぎこちなさが徐々にほどけ、笑顔が交わされる。その瞬間、今日の撮影がうまくいくことを、私は確信した。   それぞれが選ぶ、それぞれのライン   ロープウェーで再び山頂駅へ。今度は旭岳の裏斜面を狙う。 ライダーたちはまた、それぞれ異なる地形を選んだ。 ベテランの中西太洋は、雪庇でエアーを決め、切れ味鋭いターンで雪庇下を当て込んで、自身のスタイルを刻む。 藤井陽介は、小さく張り出した雪庇の端のクリフへと進む。ミスすればリスクの高い場所だが、彼は迷いなくそのラインに挑み、エアーでアクセントを加えた。 木村駿太は、テレマークならではの優雅で力強い、彼らしいターンを描きながら、木々の間を流れるようなリズムで駆け抜ける。 誰一人として同じ場所を選ばず、自分の得意分野で勝負している。 彼らのスタイルに合わせて、カメラマンの中村祐太も瞬時に構図を切り替えていた。それぞれが違う方向を見ているようでいて、同じ山を共有し、同じカメラに映る。それを切り取る中村祐太のレンズは、まるで彼らの個性を編むようだった。 その最中、藤井陽介の滑走後にフォールラインで小さな雪崩が起きる。自然の中にいることを強く実感しながら、チーム全体が改めて慎重さと集中を取り戻す。   アテンドの吾郎さんと次のポイントを話し合う木村駿太 雪庇での豪快なエアーを決める中西太洋   雪庇際のクリフに挑んだ藤井陽介   しなやかで力強いテレマークターンを決める木村駿太 誰もいないラインを目指す   最後の一本が、最高の一本に 時間の経過とともに、陽が傾き始めて、影が伸びる。その光と影のコントラストが、斜面に美しい立体感を生む。「最後は撮影を忘れて、楽しく滑ろう」と言っていたのに、ライダーたちのスイッチは最後まで入ったままだった。  最高のロケーションとライダーのポテンシャルが完全に重なった瞬間、中西太洋が完璧なターンを描き、中村祐太のカメラに収まる。 スピード、構図、ターン——すべてが完璧に揃った。  撮り終えた中村祐太が、ファインダーから目を外し、満面の笑みを見せた瞬間、全員がその出来栄えを確信した。   中西太洋のターンが映える。   それぞれの個性が“ひとつのチーム”に 最後のツリーランでは、私自身もカメラマンの隣に立ち、目の前で繰り広げられる三者三様の滑りに、言葉を失うほど胸が高鳴った。      「またやろう!」  撮影が終わる頃には、朝のぎこちない空気は一切なかった。 三者三様のスタイル。 世代も違う、得意な技術も違う、滑りの美学も違う。 でも、だからこそ、チームとして“ひとつ”になれた。 それぞれが刺激をもらいつつ、互いにリスペクトし合い、一つのチームとして、最高の1日を作り上げた。 SweetProtectionにとって、初めてのライダーズシューティング。 それは、個性が際立つからこそ一体となれた、理想の“多様性あるチーム”の在り方だった。 Sweet Protectionが誇るべき“財産”は、やはり「人」だ。 この日生まれた一体感と、それぞれの個性が際立つシューティングの空気感が、何よりの証だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー Sweet Protectionが掲げる言葉、  「LIVE TO PLAY ANOTHER DAY」 この日、それは単なるスローガンではなく、ライダーたちが体現していたリアルそのものだった。 左から藤井陽介、木村駿太、中西太洋の順   Photo: 中村祐太 Attend guide: 小畑吾郎 来シーズンも、きっとまた最高の一日が待っている。 さらに磨かれたチームと共に、新しい物語を綴れることが今から楽しみだ。    筆:Sweet...

心をととのえる山の冒険旅。蓮華温泉ツアー【後編】
【Field】札幌のMTBシーンを引っ張り続けてきたban.K TRAILS、今年で8年間の幕を閉じる。