ヘルメットテクノロジー - MIPSとは -
SweetProtectionの原点とも言えるヘルメット。私たちには”究極のヘルメットは世界クラスの衝撃保護、低容積、軽量の組み合わせの中に存在する”という哲学が根本にあります。
私たちの方針は、”性能を犠牲にして重量を削減することはしない”ということです。これは、最高の素材と最先端の製造方法を使用したエンジニアリングによって達成されます。
当社のヘルメットは、以下の 4 つの層で構成されています。
- MIPS
- シェル
- インパクトシールド
- ライナー
今回はMIPS(ミップス)についてご紹介していきます。
MIPS = Multi-directional Impact Protection System
直訳すると「多方向からの衝撃から頭を守るためのシステム」ですね。
衝撃時にヘルメットと一緒に頭が揺られること脳震盪のリスクを高める原因で、実はMIPS以前に解決へ向けて注力してきたことであり、初期の解決策はヘルメットの表面を衝撃時に地面で滑りやすいようにしておくというものでした。しかし2000年代にMIPSの技術が発表され、技術提携をスタートしたことでこの課題は大きく前進しました。
それ以来、当社はMIPS社と緊密に協力し、MIPSの優れた技術を通じてパフォーマンスの向上に継続的に取り組んでいます。現在、MIPSは当社の自転車、スキー、スノーボード用ヘルメットの全製品に実装されています。
MIPSの仕組み
MIPSを備えたヘルメットでは、シェルとライナーは低摩擦のレイヤーによって分離されています。このシステムを備えたヘルメットが斜めの衝撃を受けると、低摩擦のレイヤーによりヘルメットが頭部に対してスライドします。MIPSはヘルメットの回転運動を強化するように設計されています。
衝撃時にヘルメットと一緒に頭が揺られることは脳に影響を及ぼし、脳損傷のリスクを高めます。 MIPSは脳に伝達される回転エネルギーを吸収して方向転換することで、脳へのダメージを軽減することが科学的に証明されています。
MIPSは転倒時に対応するシステムです。実際の状況では、転倒すると、通常、頭が斜めに地面にぶつかり、頭を揺らす衝撃を受けて脳に負担がかかる可能性があります。事故統計がこれを裏付けています。ただし、標準的なヘルメットテストでは、ヘルメットは平らな衝撃面に垂直に落とされます。このテストは、正確な垂直衝撃を測定するのに役立ちますが、"斜めの衝撃"というより現実的なシナリオを測定するには足りません。
MIPSの種類
2レイヤーMIPS
MIPSの基本となる技術で、ヘルメットの内側と、ヘルメットライナーの間に低摩擦のMIPSレイヤーを入れることで、頭部への斜めの衝撃から脳に伝わる回転運動を軽減するように設計されています。最も多くのモデルに採用されている定番の種類です。
3レイヤーMIPS
ハイスピードでの滑降により店頭時は強い衝撃を受ける可能性が高いアルペンレース。ハイスピードに回転する衝撃を低減するには、より滑らかにローテーションするMIPSが必要になりました。そこでヘルメットの内側にもMIPSの素材を貼り付け、更にMIPSのレイヤーを合わせることで、MIPSのレイヤー同士が擦り合う構造となり、従来のMIPSよりも大きく性能が向上しました。これはSweetProtectionではレースシーンで活躍するヘルメット「Volata」に搭載されています。
MIPS AIR
これは主に優れた通気性と、軽量性を求められるバイクヘルメットからのニーズで生まれた技術です。MIPSレイヤーは一枚のプラスチックレイヤーですが、空気や水蒸気を通さないというデメリットがあります。そこで、ヘルメットの通気性を阻害しないよう、頭部にあたる部分に貼られているパッドと同サイズまでMIPSレイヤーを小さくカットして配置するという技術を開発しました。これは現在多くのバイクヘルメットに採用されています。
次回は『シェルの構造について』のご紹介です。